ガリ勉くんに愛の手を

佐奈が配っている場所は駅前。

と言う事は、塾のすぐそば。

僕はいつものように塾が終わって一番に表へと飛び出した。

信号待ち。
道路の向こう側で目立つ格好の女性が立っている。

(あれは?…佐奈さんだ!)

久しぶりの再会!

急に胸が踊り出した。

信号が青に変わった瞬間、走って佐奈の元へ…

「佐奈さ~ん!」

(ベン?!まさか…)

佐奈は偶然会えた事にうれしさを隠しきれなかった。

「ハァーハァーハァー…」

「ちょっと、信号渡ったくらいで何で息切れしてるん?」

佐奈は照れを隠すようにいつもの口調で話しかけてきた。

それでも僕の心は……

(うれしくて…
会いたくて…
僕なりに…
ここへ…飛んできました。)

走って来たせいか、僕の自慢の7:3が無造作ヘアーに変わっていた。

(あっ、海で見た顔。)

黒ブチメガネの奥に隠れたその素顔が佐奈には見えていた。