久しぶりに【たこ萬】が開店した。

おじさんから佐奈が退院した事を聞いて、早速塾の帰りに【たこ萬】に行ってみた。

おじさんは一人で大変そうだった。

(佐奈さんがいないと店も静かだな。)

僕は考えた。

「おっちゃん、佐奈さんの為に僕は何をしたらいいんでしょうか?
何か出来る事はないですか?!」

おじさんは難しそうな顔をして…

店の奥から何かを取って来て僕に手渡した。

「はい、これ。」

「これ、佐奈さんのエプロン?

「今、ベンが佐奈にしてあげられる事は佐奈の代わりにここでバイトする事や。」

(え―――っ?!)

思わず大声を出してしまった。

「ええか、佐奈が戻ってくるまでしっかりバイトしてくれよ。
佐奈は働き者やからその変わりは大変やで。」

もう勝手に決めている。

佐奈の為と言うよりおじさんの…為??

でも本当に佐奈のためになるのならやってみよう。

こんな僕が役に立てるのなら…


とは言うものの生まれてこのかたアルバイトをした事がない。

相変わらずコップは割るし、注文は間違えるし……

この前佐奈に怒られたばかりなのに。

(もしかして迷惑をかけているんじゃ…?)

おじさんの表情もかすかにひきつっているように見える。

それでもおじさんは佐奈の為に一生懸命がんばっている僕を応援してくれた。

(こいつ、案外根性あるな。
ちょっと、どん臭いけど……)

一応、認めてくれたのかな?