あの日以来【たこ萬】にも顔を出さなくなった。

勉強が忙しいから……

そんなのは言い訳で本当は[ひまわりさん]に裏切られた事が原因。

勝手にそう思っているだけだが。

佐奈が[ひまわりさん]だと分かった以上、追い続ける訳にはいかない。

([ひまわりさん]さようなら…)

初めて芽生えた感情を押し込めようとしていた。

僕は現実を受け止められないまま、ずっと落ち込んでいたんだ。

― 【たこ萬】では

佐奈もあの時、僕の思いつめた様子が気になっていたようだ。

(ちょっと様子見に行って来ようかな~。)

「おっちゃん、悪い!今日早引きするわ。」

「え?なんでやねん!」

おじさんの返事を待たず店を飛び出した。


― 塾の前

10時すぎ、僕は一番に塾を出た。

「久し振り、どないしてたん?」

いきなり目の前に現われたのは…!

(ひまわり…違う!佐奈さんだ。)

「最近、店に顔出せへんからおっちゃんが心配してるで。」

「……。」

「何かあった?」

(それは言えません。)

「男のくせにそんな湿っぽい顔せんと!」

肩を思いっきりはたかれよろけてしまった。

(やっぱり[ひまわりさん]はいないんだ。)