ある日曜日。

僕は自分でも無意識のうちにこの老人ホームの前に来ていた。

もしかしたら[ひまわりさん]に会えるのでは?

そんなかすかな期待を胸に膨らませ……

しかし、誰も出て来る気配もない。

(日曜日だし、いる訳ないか。)

老人ホームの前のベンチに座ってしばらく花をボーッと眺めていた。

腰を丸めて座る姿はまるで老人のようだ。

(僕の[ひまわりさん]はいずこへ……)

ため息だけが出てくる。

と、その時!

「ここで何してんの?」

(ハッ!)

人の気配にまったく気付かなかった僕は慌てて顔を上げた。

我に返った僕の目の前に立っている女性。


(ひ、ひまわりさん!)


憧れの人が今、僕の目の前にいる。

ドキンッ ドギンッ……

またいつもの症状が!

(うっ、胸が苦しい…)

「ここは関係者以外立ち入り禁止やねんけど。」

「あ、どうも、すみません。」

うつむき加減で苦しそうにしている僕を見て彼女は気付いたようだ。

「なあ、どうしたん?
どっか具合悪いの?」

「いえ、大した事じゃないんです。
いつもの事なので…」

一瞬寂しそうな顔をした。

([ひまわりさん]に心配してもらえるのなら、このまま死んでも…
いい…)

苦しそうにしながら顔はにやけていた。

(き、気持ち悪っ!)

彼女は一歩下がって変な顔をした。

([ひまわりさん]もやっぱり大阪弁を使うんだ。)

僕のイメージはとてもきれいな関東弁。

それが段々崩れて行く。

でも今はそんな事より[ひまわりさん]とこんなに身近で話が出来ただけで、もう十分幸せだった。