僕から出た言葉に祖母が急に怒り出した。

「勉!何てお行儀の悪い。
そんな言葉、覚える必要ありません。」

僕は真面目に言ったつもりなのに…

「幸子さん、一体どうなっているの?!
有名な塾に通わせているんじゃなかったの?!
すぐに塾を変えなさい!」

母にやつ当りしている。

「まあまあ、母さん。
いいじゃないですか、ユニークで。
大阪で暮らすんですから、これくらいは…」

僕は父が理解してくれた事が何よりうれしかった。

反面、祖母はひどく機嫌を悪くしたようで申し訳なかった。

「勉は、人の言う事をそのまま受け入れてしまう。
素直でいいが、それを利用しようとする人間もいる。
気をつけるんだぞ。」

「はい。」

父の言葉は重かった。


食事が終わって部屋へ上がろうとした時、祖母が僕に声をかけた。

「勉、最近塾の帰りが遅いでしょ。
どうしたの?」


「え?…あの、塾の先生が特別に教えてくれているんだ。」

「あら、そう。良かったわね。」

祖母はさっき怒った事を後悔しているのか、僕の機嫌を取ろうと必死だ。

そんな祖母に僕はまたウソをついてしまった。