最初で最後のデートになってしまったあの日。

彼女が僕に何を求めていたのか?

僕は佐奈の心の迷いに気付いてあげる事ができなかった。

もし、気付いていれば佐奈は健二の元へ行かなかったかも知れない。

あの日出来なかった事を今ここで……

「佐奈さん、キスしてもいいですか?」

「え?」

返事なんかいらない。

だってもう僕の顔が君の目の前にあるんだから。

僕にとって初めてのキス。

唇と唇が重なり合う感触。

ふわふわと体が飛んでいきそうなぐらい気持ちが舞い上がっている。

お互いの吐息を感じながら僕たちは初めてその想いを確かめ合えた。


―佐奈の気持ち⑪

ベンの初めてのキスはちょっと強引で熱い。

でもすごく緊張してるのがわかる。

唇が震えてるのがうちにそのまま伝わってくるんやもん。

でも、すごくうれしい。

うち今、ホンマに幸せやで。

ベンが好きで好きで仕方ないから。

初めてやで。
こんなに優しいキスは……

ベンにもっと近づきたくて思いっきり背伸びした。


・・・・・・・・・

佐奈さん、僕は今最高に幸せです。

今思えば、あの地下鉄で痴漢容疑をかけられた時、その時から僕たちの出会いが始まっていたんですね。

大阪へ来てからの2年間は初めて経験する事ばかりで

辛い事や楽しい事、そのすべてが僕を人間として、男として成長させてくれた大切な時間でした。

そして僕は一番大切なものを見つける事ができたんです。

それは……

佐奈さん、あなたです。

これから僕がどんな風に変わっていくかまだわからないけど、これだけは言える。

君がそばにいてくれたら僕はどんな事だって乗り越えられる。

だからずっとずっと僕のそばにいてください。

僕は君をずっと愛し続けて行きます。


  大苅 ベン。


  … おわり …

(※この後、おまけがあるよ!)