「これ、ずっと持っていてくれたんですか?」

「ち、違うねん。店に捨ててあったから…」

すごくうれしかった。

「よー見たら何か知らんけど、かわいく思えて…」

言い訳をする佐奈もまたかわいい。

「僕にどちらか一つください。」

「えっ?」

「これを持っていると恋が実るんです。」

「別に持ってへんでもいけてるやん…」

(それは、つまり?!)

佐奈はストラップを一つ外すと僕に差し出した。

「じゃ、このぶさいくあげる。」

「ぶさいく?」

「ベンが言うたやんか。こっちのぶさいくの方がうちに似てるって。」

「い、いや、別にそんな意味じゃ…」

「良いねん。うちはベンに似てる方を持っとくから。
ベンもこのぶさいくをうちやと思って持っといて。」

佐奈のそのとげのある一言一言がたまらなく…

可愛くて、愛おしくて、もう我慢ができない。

「佐奈さん。」

ギュッ!

思わず抱きしめてしまった。

「ベン?!」

(撮影の時と同じ顔してる。急に胸がドキドキしてきた!どうしよう…?!)

佐奈が目をそらすように僕の胸に顔をうずめた。

いつも強がっているけど、たまに見せる女の子の弱い部分がかわいくて…

ほんのりソースの匂いとシャンプーの香り。

その髪の匂いがたまらなく好きで…

思わず、その髪に口づけをした。

(ベン?)

顔を上げた彼女を真っ直ぐと見つめた。

「佐奈さん。
もう一度この場所から始めませんか?」

僕はあの日のように後悔はしたくない。