ガリ勉くんに愛の手を

「すごく良い!グッときた!」

ちあきはそう言って僕の手を強く握りしめた。

「ち、ちあきさん?」

「今のシーン、使わせてもらっていいでしょ?」

「はぁ…?」

曖昧な返事をしただけなのに。

「じゃ、決まりね。今度のCMはこれで決まり!」

(エッ?エ―――ッ!?)

周りにいたスタッフも一斉に拍手を送っている。

「ちょ、ちょっと待て下さい。
今の撮ったんですか?」

撮影監督が大きくうなずきながらこう言った。

「ばっちり撮ったぞ。すごく良いシーンが撮れた。」

「勉君、これが私の求めていた[君に伝えたい]なのよ。
本当によかったわ~。」

一体、何がどうなったの?

こんな事って……
あり得ない。

(そうだ!これは僕だけの問題じゃない。
佐奈さんも映っているんだ。
テレビに映るなんて絶対、嫌がるに決まっている。)

早速、佐奈に聞いて見る事に…

「佐奈さん?
佐奈さん?!どこですか?」

今まで後ろにいたはずの佐奈がどこにも見当たらない。

慌てて佐奈に電話をかけてみる。

「ゴメン、何も言わんと出てきて。
急に人がいっぱい寄って来たからなんか恥ずかしくなって……」

そりゃそのはずだ。

芝居じゃない二人の真剣なラブシーンをこんな大勢の人に見られたなんて、恥ずかしくて僕だってここから逃げ出したい。

「ベンがCMに出れるのん?」

佐奈は少しためらったが、
「うちの顔が映ってなかったらええよ。」

僕の為にすんなりOKしてくれた。

それから、このCMは全国で放送され、あっと言う間に世間の注目を浴び、クリスマス一の話題となった。

この間、色々と忙しくて連絡もできず、今日やっと佐奈に会いに来れたんだ。