ガリ勉くんに愛の手を

「あんた、大苅ベンくんやろ。」

「え?!どうして僕の名前を知っているんですか?」

「この前、店で財布落とした時、佐奈が届けに行ったやろ。
佐奈から聞いたよ。」

(あのギャル、やっぱり僕の名前ちゃんと覚えてなかったんだ。)


「見た目はちょっと怖そうやけど根は素直で優しいんやで。」

母と同じく僕も見た目で人を判断してしまう。

「…僕、去年の4月に初めて大阪に来たんです。」


…なぜだろう?

僕はいつの間にかこのおじさんに大阪へ来た理由を自然に話していた。


「そうか、どおりでお坊ちゃんやと思ったわ。」

「いえ、そんな事ないです。」

僕はおじさんが作ってくれた、たこ焼きにかぶりついていた。

「べん君、うまそうに食うてるな~。
おっちゃん、作った甲斐あるわ。」

僕の食べっぷりを気に入ってくれたようだ。

とても親しみやすい人。

父ともこんなに会話した事がないのに。

いつの間にか僕はこのおじさんを好きになっていた。

「俺は大沢って言うんや。
みんなおっちゃんって呼んでるから、ベン君もそう呼んでや。」

(大阪の人はちゃん付けが好きなんだな。)

では、早速…

「あの~おっちゃんはずっとここで店をしているんですか?」

「俺か?店をやり始めたんは5年前や。
それまではお笑いしてたんや。」

「お笑い…ですか?」

…何だろう?

「お笑い知らんの?
ホンマ大阪の事、何も知らんみたいやな。」