ガリ勉くんに愛の手を

(ベン、お願い!早くここから出て行って!)

佐奈の僕を見る目は必死で何かを訴えようとしていた。

健二はそんな彼女の肩に手を回して、
「そうや、俺と佐奈は今ええとこやねん。
ガリ勉は早く家帰って勉強に専念しなさい。」

佐奈の顔がひきつっているのがわかった。

なぜ、佐奈は心にもない事を言ったのか?

(ベン、早く帰って!お願い。)


もしかして佐奈は僕の為に?

その時、初めて気づいた。

僕を傷つけまいとして自分を犠牲にするつもりなんだ。

さらに健二は僕を挑発するような態度を取った。

今度は佐奈の後ろから手を回して頬にキスをしようとした。

佐奈はいやな顔を見せまいと必死で我慢をしている。

(離れろ…)

んっ?

「その汚い手を離せっ!」

ドスンッ、バタッ!

「いっ痛~。」

僕は無意識に健二を突き飛ばしていた。

「健二?!」

佐奈は僕がこんな事をするとは夢にも思わなかっただろう。

信じられない表情で呆然と立ち尽くしていた。

倒れた健二はゆっくり起き上り、まんまと挑発に乗せられた僕を見てニンマリと笑って見せた。

「お前、あれか?
佐奈の事が好きなんか?」

その表情とは裏腹に健二の拳に段々力が入っているのがわかった。

そしてその拳を突き上げて僕に答えを迫る。

「どっちや?佐奈が好きなんか?」

正直、怖いと思った。

でもここで逃げたら負けだ。

「ぼ、僕は…
佐奈さんが好きです!」

(ベン…)