「ちあき!」

振り向いたちあきがいったんエレベータに乗るのをやめて僕たちの方へ近づいてきた。

ちあきは僕たちの顔を見てにっこり微笑んだ。

「おめでとう、良かったわね。」

あゆ美はちあきからの祝福が何よりもうれしかった。

「本当に、ありがとう!
全部ちあきのおかげよ。」

涙をこらえながら、ちあきにお礼の言葉をかけた。

「何を言ってるの?!私は何もしていないわ。
すべて彼の実力よ。」

(ちあきさん…)

ちあきには危うく誘惑されそうになったが、やっぱりあゆ美の親友であり、名プロデューサーだと実感した。

「勉君、これからが本番なんだからね。気を抜いちゃだめよ。一緒にがんばりましょう!」

「は、はい!がんばります。」

ちあきはエレベーターを待たずにそのまま階段を降りて行った。

その姿を僕たちは感謝の気持ちで見送った。

ちあきは2階まで下りたところで急に足を止めた。

誰かが道をふさいでいる。

その男は眉をひそめながらちあきを睨んでいた。

「そう言う事やったんか。」

「健二君、どういう意味?」

さっきちあきに甘い言葉をかけた時の表情とはまるで別人のようだ。

「アイツとも関係があったんか?」

「何を言ってるの?」

「フッ、俺はただのおもちゃやったんやな。」

健二は優勝を逃した悔しさをちあきにぶつけていた。