―玄関先で

「あら、勉、こんな時間にどこへ行くの?」

「ママ、
…ちょっと図書館に行ってくるよ。」

僕の態度がおかしい事に母は気づいていたみたいだ。

「そう、お夕飯までには帰ってらっしゃい。」

「うん。
 行ってきます。」

足早に家を飛び出した。

別に、悪い事をする訳でもないのになぜだろう…
胸が痛い。

塾の帰り満男と初めて[寄り道]をした。

そして今日、図書館へ行くと言ってウソをついてしまった。

やっぱりウソはいけないよね。

一度ウソをついてしまうと段々罪悪感もなくなってくるのかな。

(僕は悪い息子だ。)

しみじみそう思った。


電車に乗って[ミナミ]まで…

今日も窓際で参考書を読む。

あの事件以来、どうしても女性を避けてしまう。

駅を出て満男に案内してもらった道を行く。

【たこ萬】へ…

気持ちが高ぶってきた。