ガリ勉くんに愛の手を

―【たこ萬】では

大沢のおじさんは店にいた里美やその他の女性客と一緒にオーディションの会話で大いに盛り上がっている。

「じゃ、誰が優勝するかみんなで賭けようか?」

「おっちゃん、うちらが勝ったら何かもらえるん?」

女子高生の一人がおじさんにそんな話を切り出した。

「そうやな~、この店の無料チケットを500円分やるわ。」

「うっそ~、そんなんめちゃセコいやん?!
もっとええもんちょうだいや!」

そんな軽い会話をしながらみんなで楽しんでいる。

「じゃ、健二が優勝すると思う人!」

「はーいっ!」

15人中10人が手をあげた。

「えらい人気やな~。」

おじさんは健二の人気を改めて思い知った。

でも手をあげた中に里美はいなかった。

「あれ?里美ちゃん健二のファン違うの?」

里美は何か悩んでいる様子で、
「うーん、そうやねんけど…うち、ミナミであのイケメンと会った時からずっと追いかけててん。

だからここでバイトも始めたし…
まさかオーディションに出てるとは思ってなかったから、やっぱり選ぶんやったら幻のイケメンやわ。」

里美を含む3人が[大泉勉]を、その他の2人は相川ショウを選んだ。

「じゃ、おっちゃんは誰にするん?」

「俺か?そうやな…」

腕を組みながら少し考えて、
「俺は最後の大泉なんとかって言うヤツにするわ。」

みんなは顔を見合せて驚いている。

「え~、なんで?
おっちゃんやったら絶対健二さんを選ぶと思ったのに。」

「ええねん。俺はなんか知らんけど、あいつに親しみを感じるねん。
ああいう頼りないヤツをつい応援したくなるんや。」

カウンターの中から佐奈はおじさんに必死で何かを伝えようとしている。

(おっちゃん、あの子が誰かわからんの?
おっちゃんがかわいがってたベンやで。)

佐奈は大きな声でそう叫びたかった。