ガリ勉くんに愛の手を

―3階控え室

健二とショウ、僕の3人は控え室で結果発表の時を待っていた。

相川ショウはまだ興奮冷めやらぬ様子で一人しゃべっている。

「やっぱり健二には勝てそうにないな。
マジすごい演技力だったよ。
これで優勝は決まりだね。」

そう言って健二の肩に手をやった。

「そうだ!健二、今日みんなで祝賀会しようぜ。
俺がかわいい女の子を大勢、連れて行くからさ。
六本木にあるバーを予約しといて…」

ショウの話を黙って聞いていた健二が突然テーブルを強くたたいた。

「ごちゃごちゃうるさい奴やな。うっとおしい、黙っとけ!」

ショウは驚いて健二からすばやく離れた。

「な、なんだよ、いきなり…」

訳もわからず健二に怒鳴られ、納得できない様子でブツブツと文句を言いながら表へ出ていった。

僕もそのやりとりを横目でじっと見ていた。

「お前も俺になんか言いたいんか?!」

「い、いえ、別に…」

すぐに顔をそらし、雑誌を読むフリをした。

(全然関係ない僕にまでやつあたりをするなんて、健二さん一体どうしたんだろう。)

優勝確実と言われた健二がなぜそんな態度を取ったのか、僕には全く理解できない。

あれからずっと下を向いたままの健二。

(俺は何を焦ってるんやろう…
なんでこんなにイライラしてるんや?
俺が優勝するに決まってるんや!)

自分の心に何度もそう言い聞かせる。

そんな健二の気持ちも知らず僕は今、とても落ち着いた気持ちでいる。

なぜだろう?

悔しいとか、悲しいとか、そんな気持ち今はまったくない。

何かをやり遂げた、達成感でいっぱいだ。

(これが終わったら佐奈さんを探しに行こう…)

僕の心はもうここにはなかった。