「違うよ。そいつとはただの幼馴染みで別に付き合ってた訳じゃないし。」

（な、何だって？！何を言っているんだ？
佐奈さんがただの幼馴染だって？！）

健二から出てくる信じられない言葉が僕の心をかき乱す。

「でも同棲してるんでしょ？
男と女が一つ屋根のしたに暮らしてたらそりゃ関係がないって事はないよね～。」

「フッ、それは想像に任せるわ。」

健二たちは佐奈の事を話題にして面白がっている。

（そんな会話を人前でするなんて許せない！）

佐奈がさらし者になっているようで聞いていられなかった。

さらに健二から出た言葉は…

「でも、もう一緒に暮らしてないから。」

「えっ、そうなの？！
やっぱりちあきさんに乗り換えたんだ。」

「違うって、あいつが勝手に出て行ったんや。」

（さ、佐奈さんが出て行った？！まさか…）

どうして…？

僕は、ずっと佐奈が健二と幸せに暮らしているものだと思っていた。

そう信じていたのに……

「あいつには東京暮らしが合えへんかったんやろ。
今頃、大阪でたこ焼きでも焼いてるん違うか？！」

もう我慢できない！

ここまで佐奈を侮辱されて黙っている訳にはいかない。

僕はこみ上げる怒りを抑え切れず、とうとう感情を表に出してしまった。

我を忘れ、立ち上がり健二の肩を力いっぱいつかんだ。

ガバッ！

「なんや、お前？」

振り向いた健二が僕を睨みつけた。