隣りにいたイッコーがずっとその会話を聞いていた。

「ちあきさん、何だって?」

「う、うん。
イケメンの勉君に会いたいんだって。」

その言葉を聞いてイッコーの顔つきが変わった。

「危険だわ。」

「…どういう意味?」

それ以上イッコーの口から何も聞き出せなかった。

僕があゆ美たちの所に帰る頃には後ろに女の子たちの行列ができていた。

「行ってきました。」

「勉君、すごいわね。」

僕の後ろを見ながらあゆ美が感心している。

「何、この子たちは?!
もう勉ちゃんに[追っかけ]ができたの?」

イッコーはその子たちを見てにらみをきかせながら、

「あんたたち、私の勉ちゃんに近づかないで!
あっちへ行きなさい。シッシッ!」

手で追い払っている。

「勉ちゃん今日私のところに来ない?
悪い虫がつきそうで私心配だわ~。」

(イッコーさんといる方がよっぽと心配だ。)

「なんですって?!」

(また聞こえてるよ~!)

本当に恐ろしい人だ。

[追っかけ]を追い払ったイッコーはまた派手な車に乗り込んだ。

「それじゃ、私はこれで失礼するわ。
勉ちゃん当日会場で会いましょうね。!」

「は、はい。
ありがとうございました。」

「あゆ美さん、勉ちゃんをヨロシク!」

「え、ええ。」

イッコーの目はあゆ美に何かを訴えようとしていた。