ガリ勉くんに愛の手を

この異様な雰囲気から逃だす方法を探る。

(入口以外出られるのは窓が一つだけ。
でもここは7階、到底飛び降りるのは無理だ。)

そんな僕をよそに、ニヤニヤと笑いながらイッコーは僕の前でいきなり上着を脱ぎ始めた。

「さぁ、勉ちゃんあなたも脱いで。」

「ええっ?!脱ぐんですか?」

何の為に?!

(ウソだ。いくらなんでも男同士でそんな…)

僕の脳裏に変な想像が広がっていく。

「早くお脱ぎなさい!」

不気味に微笑むその顔が僕を恐怖へと導いて行く。

その時、急にあゆ美の顔が頭に浮かんだ。

ここで逃げ出したら、あゆ美の期待を裏切る事になる。

(何があっても途中で逃げ出す訳にはいかない。)

僕は変に律儀なところがある。

全く損な性格だ。

清水の舞台から飛び降りる覚悟で上着を抜ぎ捨てた。

そしてそのひ弱な体を見ながらイッコーはゆっくりと僕に近づいてきた。

(もう逃げられない。
佐奈さん、過ちを犯す僕をお許しください。)

僕は覚悟を決め、ゆっくりと目を閉じた。