佐奈はその言葉を冷静に受け止めた。

「わかってる。」

「そうか、わかってたらいいんや。
俺は今回だけはベンの味方や。」

(おっちゃん。)

「お前が黙って東京に行った時、ベンがどれだけ傷ついたか。

俺がお前の為に諦めてくれって頼んだ時、あいつ何て言うたか知ってるか?

僕が初めて好きになった人やから簡単には諦められへんって。

自分が引き止めるって飛び出して行った。」

その言葉を聞いて佐奈が号泣した。

「うち…なんてひどい事を…」

「そうや、お前はあんな純粋な奴をボロボロに傷つけたんや。」

(ごめん、ごめん、ベン。
うちを許して……

こんな自分が憎い、情けない。

もうどうしようもなくベンに申し訳なくて…)

「そやからお前がベンを好きになる資格はないんや。わかるか?佐奈。」

「わかってる。ずうずうしいのはわかってるよ。
汚い女やって事もわかってる。

…けど、どうしようもなく胸が痛い、ベンの事を思うと苦しい。」

(お前そこまで思ってたんか。)

おじさんは佐奈の気持ちを十分理解していながらあえてきつい言葉を浴びせた。

「俺はお前を応援せえへんぞ。でもな何もせんとあきらめるな。
だめもとで一回ぶつかってみ。」

おじさんはそう言って店を出て行った。

(おっちゃん…)

佐奈はその言葉に込められたおじさんの思いが心に伝わってきた。

(おっちゃん、うちあかんでもがんばるわ。)

佐奈はあふれる涙をぬぐいながらおじさんから受け取った箱の中から2つのストラップを取り出した。

そして携帯に取りつけた。

(気持ち悪いけどかわいい…)

顔には笑みがこぼれていた。