ガリ勉くんに愛の手を

「おっちゃん、お願いがあります。」

「なんや?
あらたまって…」

「うちをまた【たこ萬】で雇ってください。」

(佐奈…)

「しゃーないな、お前みたいな無愛想なヤツは他では雇ってもらわれへんし!」

(それには反論出けへんわ。)

現に佐奈は何軒もアルバイトを断られてきた。

「ただ、うちが行ったら…」

おじさんは佐奈の気にしている事がすぐにわかった。

「ベンの事か?」

「…うん。」

「あいつはもうおらん。
辞めたから。」

「…辞めたん?」

「そうや1か月前にな。
なんか自分のやるべきことを見つけたとか言うて。」

(そうなんや…)

心のどこかでかすかに期待をしていた…

「そっかぁ、そりゃちょうどええわ。
気を使わんでいいし。
戻りやすくなったわ。」

「そうか、来てくれるか?
ちょうどアルバイトが辞めて困ってたんや。」

「そうなん?
あの店、こき使う割に時給安いもんな。」

「お前、よー言うたな!」

「すんません。」

ハァッハァッハァッ…

たわいもない会話。

でも、佐奈が自分らしくいられるのはおじさんのいる【たこ萬】だけだ。

(ここが一番うちの居心地のええ場所や…)