ガリ勉くんに愛の手を

しばらくして下に自転車を止める音がした。

(もしかして…)

タンタンタンタンっと軽く階段をかけ上がってくる音…

そして佐奈が部屋の前へとやってきた。

「お、おっちゃん…」

佐奈は幻でも見るようにただ呆然と立ち尽くしている。

「佐奈!」

「な、なんでおっちゃんがここにいてるの?」

「お前こそなんで帰ってきた事黙っててん。」

「……」

「佐奈!お前と俺はそんなちっぽけな関係やったんか?!」

佐奈は何も言い返せずただじっと顔をそむけていた。

「おっちゃん、ごめん。
うち、みっともなくて…
偉そうに出て行ったのにこんな惨めな姿でどうやって顔合わせたらいいか…」

バシッ!

(痛っ)

「バカタレ!
お前も健二も俺を誰やと思ってんねん。

俺はお前らの親代わり違うんか?!

なんでそんな事で遠慮する必要があるんや。

おれはホンマ悔しい、悲しい、腹が立つ!」

「ごめん、ホンマにごめん。
おっちゃん、許して…」

佐奈はその場で泣き崩れた。

「佐奈、辛い時は俺に泣きつけ、腹立つ時は俺にヤツ当りしたらええやんけ。
カッコつけて生きる必要ない。
そうやろ?!」

「…うん。」

自分からはもう戻れない。

もしおじさんが来てくれなかったら一生帰れなかっただろう。

佐奈は心からおじさんの優しさに感謝した。

おじさんを部屋に入れ、東京での生活や健二との事を全部正直に話した。

「そうか、そうやったんか。」

「うちが悪いねん…」

「俺、さっき健二にキツイ事言うてしまったな。」

(おっちゃん、うちのために…)

佐奈はこの時おじさんの親心を感じた。