佐奈と健二。

あの日以来、二人の関係はおかしくなったまま。

佐奈は何も手につかずただボッとテレビを見ていた。

♪ピンポーン♪

(誰かな?
あ、もしかして健二?)

かすかな期待を胸に玄関の扉を開けた。

「佐ー奈さん。」

(なんだ、まりさんか…)

「健二さんじゃなくてごめんなさいね。」

「いや、別に…」

「ねえ、佐奈さん、家でじっとしていてもつまんないし、たまには私と食事にでも行きませんか?」

「まりさんと?」

(向こうから誘ってくるなんて珍しい。)

もしかして、健二が気を使ってまりに頼んだのかも知れない。

(どうせ暇やし、たまにはいいか。)

最近、まりとも隣りにいるせいか徐々に打ち解けられるようになってきた。

佐奈も一人でじっといるのはもう飽き飽きしていたところだ。

「じゃ、すぐに支度するからちょっと待ってて。」

「は~い。」


(…ふん、いつまで健二さんに囲われているのよ。
あんたなんか相手にされてないのに…

今日はっきりと思い知らせてやる。)

まりは、励ますフリをして何かを企んでいた。

(女同士やし、普段着でいいよな。)

佐奈は普段と同じ飾らない格好で表へ出てきた。

「おまたせ。」

(何?その格好…まぁ、本人が恥をかくだけだし…)

「じゃ、行こうか?」

「はい、下にタクシー呼んでありますので。」

佐奈は何も知らず、まりの言う通りついて行った。