二人がこうして会うのは2年ぶりの事。

「連絡ぐらいしてよね。
いきなり現れるんだもの。」

「ごめんなさい。
急に仕事の打ち合わせが入ってさっき大阪に着いたばかりなの。」

「相変わらず、プロデューサーは大変ね。」

「まぁ、自分が選んだ仕事だから。」

ちあきは30歳の若さでCMプロデューサーとして活躍している。

「そういえば、この前雑誌で見たんだけど12月に大阪でCM撮影があるんだって?」

「そうなのよ。
情報が速いわね。」

「何、言ってるの?
ちゃんと週刊誌に載ってたわよ。

その主役に関西出身の若手タレントの[健二]って子が有力候補なんでしょ?」

ちあきの顔が少しひきつったように見えた。

「ええ、まぁ。まだ決まった訳じゃないわ。
来月に最終のオーディションがあるからそれで決まるのよ。」

「へぇ、そうなんだ。

でも、ちあきが責任者なんだからやっぱり最終的にちあきが決めるんでしょ?」

(あゆ美は昔から勘が鋭い。)

思わず、本当の事を言ってしまいそうになった。

ちあきの反応を見てあゆ美は急に態度を変えた。

「ちあき~、実はお願いがあるの。」

「何?改まって…」

あゆ美がお願い事をする時は決まって無理な事を言い出す。

(いやな予感がする。)

「お願い!そのオーディションに私が推薦する子を出して欲しいの!」

「えーっ?!無理よ、いくらあゆ美の頼みでも。

このオーディションの出場者は全国1万人の中から予選を勝ち抜いた子だけが受けられるの。

もう候補者も決まっているのよ。」

ちあきに断わられる事ぐらいあゆ美は予想していた。

その返事を聞いて急にあゆ美が開き直った。