―高級ホテルのラウンジ


健二は今日大事な約束があった。

お酒も飲まず、じっと誰かを待っている。

「おまたせ。」

「あ、どうも。お忙しいところ、わざわざ来て下さってありがとうございます。」

「ふふっ、何、改まっているの?
普通でいいわよ。
ここはプライベートなんだから。」

「は、はい。」

健二がやけに緊張している。

「あの~、ちあきさん。
今度のCMの件なんですが……」

「その事?まだ何も決まっていないわ。
あれは最終的にオーディション決まるから。」

「そうですよね。
実は、僕も最終オーディション受ける事になったんです。」

「あら、そう。予選通過したのね。
おめでとう!

そりゃそうよね。あなたは有力候補ですもの。」

「いえ、周りが勝手に言ってるだけです。
ちあきさんはどう思っているんですか?」

「私?私は仕事とプライベートは一緒にしないの。
だからこの話はここではできないわ。」

その言葉を聞いて健二の顔が一瞬、ひきつったように見えた。