♪ピンポーン♪

（来たっ！）

慌ててドアの鍵を開ける。

「ただいま。」

（ただいま？）

なんか、その言葉を聞くと新婚夫婦みたい。

「お帰り。」

「うーん、いい匂いがして来たで～。」

健二は靴を脱ぐとそのまま料理がおかれているキッチンへと向った。

「まだ、あかん。
ちゃんとテーブルに座ってから。」

「おー怖いな。
はいはい、じゃ座って待っとくわ。」

うちは中学の時から自分で料理をしてきたから腕には自信がある。

あの頃はまだ幼くて健二に食べさせてあげたのはカレーとか、オムライスとか…

簡単なものばっかり。

今のうちの腕を見たら健二、ぜったい感動するに違いない。

期待に胸を膨らませ、健二の前に料理を並べる。

「うわーっ、すごい豪華やな。
これ全部、佐奈が作ったん？」

「うん。」

少し照れながらうなずいた。

「じゃ、まずワインで乾杯しよか？　」

「うち、お酒は…」

「なんや、佐奈。
まだ飲まれへんのか？
乾杯だけやから、な！」

「じゃ、ちょっとだけ。」

ワインを半分ほど注いでもらいグラスを持ちあげた。

「それじゃ、二人の再出発に乾杯！」

「乾杯。」

カチンッ♪

健二は一気にグラスを空けた。

うちはちびちびと少しずつ口にふくめた。

「あー、今日のワインは最高や。」

（なんやろ？ちょっと飲んだだけやのに頭がクラクラして顔が熱い…）

「おお、佐奈。
もう酔っぱらったんか？」

「いや、別に…大丈夫。」