次の日、僕は【たこ萬】に行くのが怖かった。

(佐奈さんにどんな顔をして会えばいいのだろう…?)

あれから健二とどうなったのか?

直接、佐奈に聞いてみる勇気もない。

店に行くと、佐奈はいつものように忙しそうに動き回っていた。

「ベン。ちょっと手伝って~!」

「は、はい。」

(やっぱりいつもの佐奈さんだ。)

少し安心した。

あの時のキスが軽いキスでなんでもなかった…

…そう願いたかった。

時は過ぎて今日のバイトも無事終わった。

「ベン、お疲れさん。」

「お疲れ様でした。じゃ、僕はこれで。」

先に店を出ようとしたその時、

「ベン、ちょっと!」

(えっ?)

佐奈が僕を呼びとめた。

「あのさぁ、前の映画の券…まだある?」

「え?!あ、ありますけど…」

「良かった~!
うち、この前断ったけどなんか急に観たくなって…

一緒に観に行けへん?」

(そ、それって、まさか…?!)

「ひょ、ひょぇーっ!」

驚きのあまり声が裏返ってしまった。