ガリ勉くんに愛の手を

(気付かれたかな?)

僕は見てしまった。
すごいものを…

どこをどう走っているのか自分でも良くわからない。

(前がよく見えない。)

目には洪水のように涙があふれている。

(ひどいよ、佐奈さん……)


―おじさんのアパートの前

健二が佐奈を連れ、いなくなって一気に客足が途絶えた。

それからおじさんは一人で店を閉め、家に帰ってきた。

(健二のヤツ、佐奈をどこへ連れて行ったんやろう…)

佐奈の事を心配しながらアパートの前にたどりついた。

「ん?誰や?!」

階段の下で小さく丸くなって座っている人影。

「ベン?ベンか?!」

僕は顔をあげておじさんに飛びついた。

「お、おっちゃん~!」

「どないしたんや?」

「僕、もうだめです。
死んでしまいたい…」

「ま、待て!とりあえず、うちでゆっくり話そう。」

僕はおじさんに体を支えられながらアパートに入って行った。