いつもの裏道から駅へ向かってトボトボ歩いて行く。

その先の建物の前で誰かが言い争うような声が…?

気になってそうっと近づいてみた。

積み上げてあったビール箱のすき間からその様子を覗きこむ。

そこにいたのは佐奈と健二。

「佐奈、俺仕事でここに来たって言うたけど、ホンマはお前を迎えに来たんや。」

「え?!そんな事…
冗談言わんといて。」

「冗談違う!俺は本気や。
やっと、一人前になれたんや。

今やったらお前を連れて帰っても誰にも文句は言わせへん。」

(健二、ウソって言うて!)

「なあ、佐奈。俺と一緒に東京行こう。
もう一回やり直そう。」

(そんな事、急に言われても…)

佐奈は一瞬言葉を詰まらせたが、やがて小さな声でつぶやいた。

「今さらもう無理やわ。」

思わぬ返事に健二の表情が曇った。

「なんでや?
俺の事嫌いになったんか?」

「そんなん違う。
でも…
うちら別れて2年も経つし、もう前みたいには戻られへん…」

「俺の気持ちはあの時と何も変わってない。
俺は今でもお前が好きやで。」

(健二……)