おじさんと話が盛り上がっていた健二は、後ろでウロチョロと走りまわっている僕に気づいた。

「なぁ、おっちゃん、あれ誰?」

「あ、ああ。うちでバイトしてもらってる子。」

「ふ~ん。えらい雰囲気違う子やな。」

その瞬間、僕は健二と目が合ってしまった。

「は、はじめまして。
大苅 勉(つとむ)と申します。」

軽く頭を下げて挨拶をした。

「どうも。
君、賢そうやな。
こんなところで、バイトしてるタイプには見えへんけど。」

その言葉が嫌味に聞こえ、カチンッときた。

「いや、この青年は未来のお医者さんになる将来有望な人材やねん。」

「また、なんでそんなガリ勉がここで働いてるん?」

(ガリ勉と言うな!
一言一言がいやみなヤツ!)

僕は、なぜかこの健二が気にいらない。

「まぁ、せいぜい足引っ張らんようにがんばりや。」

(大きなお世話だ!)

健二は、懐かしい雰囲気を思い出しながら店の中を見渡していた。

「ところで、佐奈は?」

「え?ああ、今買出しに行ってる。」


(佐奈?!
今、佐奈と呼び捨てにしたな。)

その言葉だけは聞き逃さなかった。

「ふ~ん、佐奈と会うのも2年ぶりやな。元気?」

「お、おぉ。相変わらず、元気でがんばってるで。」

「そうか、そりゃ良かった。
早く会いたいな。」

この時、おじさんの顔が少し不安げに見えた。

(今、佐奈と健二が会ったらどないなるやろう…?)