暑い夏がやって来た。

「うわぁ～、すっかり夏やな。ホンマ大阪はジメジメして蒸し暑いわ。」

ただでさえ、暑いのにたこ焼きを焼いているおじさんの額からは汗が吹き出している。

そんな平和な日々を送っていたある日【たこ萬】にすごい出来事が起こった。

僕は、いつものようにカウンターを片づけながら必死で働いている。

佐奈は、おじさんが買い忘れたタコを買いに出かけていた。

「おっちゃん、タコを忘れてどうやって、たこ焼き焼くんですか？
本当に気をつけて下さいよ。」

自分の落ち度は認めたものの、僕に何か言いたげな顔でこっちをチラチラ見ている。

（なんや、こいつ！
いつの間に俺にそんな偉そうな口聞けるようになったんや？）

おじさん、僕に言われたのが相当腹が立ったようで、ブツブツと聞こえないように文句を言っているようだ。

その時、なにやら店の前で女性たちの甲高い声が聞こえてきた。

「なんや騒がしいな。」

ガラガラ…

「よっ！おっちゃん。」

「健、健二？！」