―【たこ萬】の前

結局、僕はここに来てしまった。

僕の行く場所はここしかない。

もう迷わない。

誰に何を言われようと……

僕はここで自分を見つけた。

僕には彼女が必要なんだ。

(もう閉店したのかな?)

すでにのれんはかかっていなかった。

入口の扉に手をかけて開けてみる。

ガラガラ…

(あ、開いた。)

「お客さん、もう閉店やねん…」

(佐奈さん?)

「あ、 …ベン。」

二人を引き寄せたのは誰でもない。

会いたいと言うお互いの気持ち…

僕は、佐奈と会った瞬間、嬉しさと、悲しさと…

色んな感情がいっぺんにこみ上げて来て…

「ベン、この前は…
うち… 」

ギュッ!

「ベ、ベン?!」


「少しだけ…

お願い、少しだけ…

このまま…

いさせて…

 …下さい。」

僕は佐奈を思いっきり抱きしめた。