「はい、今日はここまで。
みんな期末テストまであと何日もないから気を抜かんとがんばれよ！」

「はい。」

今日の授業は長く感じた。

いつものように帰り支度を終え、席を立とうとした瞬間、

「大苅、ちょっとええか？」

「は、はい。」

塾の講師である岡田が僕を呼びとめるなんて初めての事だ。

「先生、なんでしょうか？」

「お前、最近おかしいぞ。
どないしたんや？」

（え？）

やっぱり気付かれていた。

「別に…。」

塾の講師に言う事なんて何もない。

「受験の事で悩みがあるんやったらいつでも相談にのるからな！」

「はい、ありがとうございます。」

受験の事だけか…

そうだよね。

こんな悩み、聞いてくれる訳がないよね。


「キャ―ッ！」

いきなり廊下から女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。

「な、なんや？」

先生と僕は顔を見合わた。

慌てて先生が教室を飛び出した。

「お前ら、どないしたんや？」

「先生～、階段の下に［変なおじさん］がいてるんです。」

「変なおじさん？」