ガリ勉くんに愛の手を

「…もう来やんといて。」

佐奈にそう言われたのは、ちょうど2週間前。

その言葉が耳なりのように何度も繰り返し、今でも時々聞こえてくる。

(僕は完全に嫌われたんだ。)

そう思った。

塾の窓から外を眺める。

普段、黒板から目を離す事なんて滅多にないから、こうやって眺める風景は初めて見るような気がした。

これも新しい発見で、まんざらでもなかった。

(やっぱり、僕の居場所はここなのかも知れない。)

まるで下界を見下ろすかのように[ミナミ]の街を覗きこむ。

一瞬でもその下界に舞い降りて、その中でやっていけるのではないか…

あそこにいる人たちと同じ世界で生きてみたい…と思った。

錯覚してたんだ。

僕にはもう【たこ萬】に行く資格なんてないんだ。

そして、佐奈を好きになる資格も……


彼女がいつもどんな気持ちでいたか、考えた事もなかった。

あの時、なぜ彼女が怒っていたのか?

(なぜ、気付かなかったんだろう。)

今になってやっとわかった。

でも、もう遅い……