店には、もう客は誰一人いない。

(あ~なんとか、一人で切り抜けたな。
小麦粉も切れたし、今日は早めに閉めるか。)

佐奈たちが買出しに行った後、一人で店を切り盛りしていたおじさん。

いつもより早めにあと片づけを始めていた。

(あの二人、えらい遅いな~。)

そうつぶやきながら、おじさんの頭の中で次第に妄想が広がって行く。

(ベンのやつ、今頃、佐奈に告白して二人でいちゃついてるとか?)

おじさんのいやらしい想像はさらに広がって行く。

(ムフフフッ… )

想像力豊かなおじさんは一人興奮している。


ちょうどその時、佐奈が帰ってきた。

「お!おお、佐奈お帰り。どうやった?

い、いや、ちゃんと買ってきたか?」

…無言。

(あれ?ベンがおらんな。
そうか、二人揃ってきたら俺に冷やかされると思って別々に来たんやな。

ホンマ、焼けるな~!)

一人テンションが高い。

そう思ってはいたものの、意地悪して聞いてみる事にした。