ホテルを出てから僕と佐奈は無言でさっきの大通りまで歩いてきた。

2メートルの間隔を保ったまま。

佐奈は今、何を思っているのか…?

(あっ!そうだ、買出しに行くんだった。)

僕は後ろを振り向いた。

「佐奈さん、すみません。僕の用事に付き合ってもらって。
あの、買出しはどこに?」

(ベンの用事?
ただの用事……)

佐奈は急に足を止め、うつむいたままこう言った。

「ベン。

そのまま帰り…」

「え?買い出しは…」

「うち、一人で十分や。
あんた、いてない方が仕事がはかどる。
だから、もう帰って…」