ここは、夜のネオン街。

僕は車に気を取られ、そこがどういう場所なのか、全く気づいていなかった。


ただ、連れて来られた佐奈は……

(ウ、ウソーッ?!ちょ、ちょっと、待って。
ベン、いきなり…ここはないやろ?!)

僕たちが迷い込んだ先はラブホテル街だった。

僕は父たちが、一軒のホテルに入って行くのを目撃した。

入口の前。

建物のずっと上に飾られたピンク色に光る看板を見上げてつぶやいた。

【§ロマンス§】

(ここか…)

僕はこの時、大事な事を忘れていた。

佐奈も一緒だと言う事を……

「あ、あの~、ベン?
やっぱりこういう事は、順序があって…

うちら、まだ…

お互いの気持ちもちゃんと確かめ合ってないし、心の準備って言うものが…」

いつもの気の強い佐奈ではない。

顔は真っ赤で普通の[女の子]になっている。

「入りましょう。」

「えっ、ホンマに?!」

佐奈の目がまんまるになった。

僕は佐奈の話なんか、まったく聞く耳をもたず、そのままロビーへ突入した。