チラシ配りに、店の手伝い、坊ちゃん育ちの僕がこんなに働いたのは生まれて初めての事。

佐奈が僕の前へ近づいてきた。

「ベン、ありがとう。あんたのおかげや。」

頭をぺこっと下げた。

(ベンがあの時、あの格好でチラシを配ってなかったらこんなにお客は来へんかったはず。)

「いえ、こちらこそ。」

「なんで、あんたが頭下げるの?」

「いや、佐奈さんに謝らないといけないんです。」

まだ佐奈真実を伝えていない。

僕はその場で土下座をした。

「佐奈さん、本当にごめんなさい!
あんな事になったのは全部僕のせいなんです。」

「ちょ、ちょっと、やめて。
もう、ええねん。終わった事やし…」

「だめです。まだ終わっていません。
僕は最低の男です。
佐奈さんを信じてあげられなかった。
あなたを助けてあげられなかった……」

自分の情けなさに涙が勝手にあふれて出ていた。