二人はやっと【たこ萬】に帰ってきた。

「ただいま~」

(え、ええ?!!!!)

店の中は、溢れ返るぐらいの女性客で埋め尽くされている。

おじさんは一人で大忙し。

「おーい、佐奈、ベン!早く来て手伝ってくれ~」

猫の手も借りたいぐらいの忙しさ。

「おっちゃん、一体どうしたん?!」

「こっちが聞きたいわ。急にチラシ持った女の子がいっぱい押し寄せて…
なんせ早く、仕事してや!」

二人は慌ててエプロンをつけ、お客の対応に追われた。

「ねえ、おっちゃん、あのイケメンここに来るの?」

おじさんは何も知らないはず…だが、

「あ、ああ。いつでもくるよ。
毎日通ってたらイケメンに絶対会えるよ。」

「うそ~、そしたら、うち毎日来るわ。」

佐奈の冷ややかな目がおじさんの背中に突き刺さる。

(…おっちゃん、ウソはあかんやろ?)

(ううっ、バレた?これも店のためや。
ウソもホカベンって言うしな。)

(そんな、アホな。後でバレたらえらい目合うよ…)

佐奈の冷たい視線を避けながら、ひたすらたこ焼きをひっくり返している。

(久しぶりに働くとなんだか、楽しいな~)

僕は、この騒ぎのきっかけが自分だと言う事にまったく気付かず、一人張り切っていた。