この[ミナミ]と言う街は僕には似つかない。

ふと、ショーウィンドーに映る自分の姿をじっと見つめた。

(やっぱり駄目かな。)

自分でもイケていない事ぐらいわかっている。

でも、あんなにはっきり言われたら誰でも落ち込むに決まってるだろう。

(こんなんじゃ、佐奈さんに好きになんか絶対なってもらえないや…)

そんな一人事をつぶやいていると…

ジーンズショップの前にいた、お姉さんに声をかけられた。

「ねえ、真面目そうな君。何か悩み事?」

久しぶりに聞く東京弁。

なんだか、親近感がわいてくる。

「い、いいえ。なんでもないです。」

「うそ、私にはわかるわ。あなたの悩み…」

「え?!」

「格好よくなりたいんでしょ?」

(なんで分かったんだろう?
もしかして…占い師?)

「私に任せて。ね!」

そう言って、店員さんは僕の手を引き、店の中へと引っ張って行った。

「うーん、これ…と、これがいいわね。」

僕に似合いそうな服を探している。

そして、それを持って試着室へ。

(な、何?!この服、ちょっと派手じゃ…)

「どう?着てみた?」

「え? あ、はい。」

店員さんはいきなりカーテンを開いた。

「キャ~、メチャメチャ似合ってるわ。バッチリよ!」

(似合ってる…?)

そんな事、言われたの初めてだ。

つい、うれしくなって言われるまま、その服を買ってしまった。

黄色いハワイアンなTシャツにGパン。

(やっぱり、恥ずかしいなぁ。
今さら返せないし、このまま行くしかないかな。)

恥ずかしそうに店を出ようとした僕をまた呼び止めた。

「ちょっと、待って。」