(ベン、ホンマにありがとうな。)

おじさんは頼りないけど真面目で真っ直ぐな僕の性格を気に入ってくれた。

(やっぱり、佐奈とベンがくっついてくれたらええのに!)

そう心の底では願っている。

「よ~し、俺も呼び込みがんばるぞ!」


僕はチラシを持って出たものの、[ミナミ]の街を未だに知らない。

どこへ行けば、いいんだろう…?

右、左、キョロキョロしながら歩き回っているだけ。

(とりあえず、ここらへんで配ってみよう。)

[ミナミ]のド真ん中。

人通りの多い場所を見つけ、カバンの中からチラシを100枚ほど取り出した。

(ちょっと、緊張するな~。まあ、チラシなんて誰でも受け取ってくれるだろう。)

世間知らずの僕は安易に考えていた。

そして、前を通る若者に1枚差し出した。

「どうぞ、よろしくお願いします。」

頭を下げながら、丁寧に渡してみるが…

受け取ってくれない。

(どうしてかな~?割引券がついているのに……)