「待って、勉君!」

真理亜が僕の足にすがりつき、必死で引きとめようとしている。

「放して、これ以上、君を嫌いになりたくないんだ。」

「助けて、さっきの話を聞いたでしょ?私、脅迫されたの。」

もちろん、話は全部聞いていた。

でも、真理亜を助ける気などある訳がない。

(僕の大切な人を傷つけて…今さら…)

僕は真理亜の顔も見ず、しがみつく手を必死で振り払らった。

「勉君、お願い。助けて…私、あなたに見放されたら、もう、生きていけない…。」

芝居か?その涙は…

信じるものか…

騙されるものか…

今まで一度も人を疑った事のない僕を…

こんな風にしたのは誰なんだ。

「自業自得だよ。」

冷たいその言葉に、真理亜の手が僕からスーッと離れていった。

(さようなら。)