「それで、どうしたんですか?」
滝は後ろから恐る恐る話かける。快楽に酔いしれたような顔から殺気立つ顔に変わった。滝は肩をビクつかせて壁にもっと張り付いた。
「お前にこたえる理由ねぇよ。」
静かな差別の声だった。
「朱鳥くんどうして滝はダメなんだ?」
「あぁ?奈島と前野はいい体してるから蹴りがいがありそうなんだよ。だから、仲良くしてんの。それに比べてどうよ?なぁ奈島も思うだろ。滝って細っちぃんだよ。蹴ったら一瞬でKOしちまいそうで蹴りがいねぇ。」
(・・・!いやな理由だな。)
奈島は自分があいた質問に後悔をしながら、苦笑いを浮かべた。滝は滝でしょぼくれたような顔をしてもっと部屋のはじにさがった。
「なぁ。奈島。」
「な、なんだ。」
あきたようにデスクに頭の載せながら朱鳥は下から奈島を掬い見た。
「後で蹴らせて。」
「・・・っ!いやだ。」
「うぇええ。いいじゃねぇかよぉ。ちぇっ。奈島の意地悪めが!」
さっきと打って変わった表情。拗ねて口をとがらすその顔はまだ子供の顔だった。一喜一憂するその姿もまたまだ子供っぽさが残っていた。
(精神年齢が下がった、のか?さっきの明香ちゃんが14歳で今は約10~12歳ほどと見るのが一番だな。)
奈島はまた一人考え込む。部屋には、ペチッペチッという小さな音しかしない。後はPCのキーボードを叩く音。(吉田は静かにPCに向かっている。)
「なぁ。なし・・・。」
頭を持ち上げた少年は目を見開いてまた頭を投げやりにデスクに向けた。奈島は途中まで自分のことを呼んでいた幼い少年少女に目を向けた。
「朱鳥くん!?どうした?」
奈島は椅子から立ち上がると少年の肩を揺らした。長い髪は淫らに揺れる。前野は目の前の状況にやっと顔を上げた。
「すまない奈島・・・。朱鳥君はどうしたんだ?」
額に浮かんだ汗は前野の精神状態を意味しているようだった。奈島は前野に視線を向けた。困惑したような険しい顔をしていた。
「いきなり倒れたんだ。」