「えっとじゃぁ君は明香ちゃんじゃないんだね。あすかくんなんだね?」
「あぁ。物分かりのいいやつはオレ話してやってもいいんだぜ?朱色の鳥で朱鳥だ。前野わかったよな?」
「あ、あぁ。君は朱鳥くんなんだね?」
「そうだよ!なぁなぁ。オレな最近いいことあったんだぜ?」
このまま流れにのって話を聞くべきか事件についての話を聞くべきか。前野は助けを求めるように奈島に目線を向けた。前野は、『ご自分で』というようにまた肩をすぼめた。さっきまでとは違うため息をつく。
「どんなことだい?」
「あいつらを殺したんだよっ!真っ赤なんだぜ!女の方のことな。臓物きれいな形してやがんの。オレいやでしょーがなくてさ、ぐりぐりって潰してやった。ブッシューって赤いの飛び出て、超きれいなんだけどさ、赤だけじゃ、足りねぇよ!足りねぇんだよ!足りねぇ足りねぇ足りねぇ足りねぇ足りねぇ足りねぇ足りねぇ足りねぇ。足りねぇんだよ!!!!」
前野は頭を押さえて、少年と変わった少女の叫びを聞き流した。ただひたすら『足りねぇ』と言う少年の足はあの時を思い出しているのか無意識に何かを潰すような動作に変わっていた。前野はそれさえにも、目をつぶりたくなった。
「なぁ。朱鳥君。なんで足が動かせるんだい?俺に教えてくれないか?あぁ、俺奈島なよろしく。」
いつのまにか近づいたのか、青白い顔の前野のとなりには奈島が立っていた。奈島の顔も神妙な顔をしていた。(だが、笑ってたけどな。)少年の瞳孔は奈島に向けられた。その瞳は奈島の目に吸いつくように見入っていた。
「いいぜ。奈島になら話してやるよ。オレなあのくそな女に小さいころ言われたんだよ。『お前の手は人を傷つける。もうやめてくれ。もうその手を使わないでくれ』って。」
声真似をするかのように顔をしょげたような悲しそうな顔にする少年は、あたかもこの状況を楽しんでるようだった。