頭はいいけど、頭がバカなおこぼれちゃん

苦笑いをうかべる奈島は、30前半ながら一人暮らしなのだ。モテそうな顔立ちなのに彼女無しなのが不思議だ。
「なんだ。奈島愛されてるじゃないか。俺は止める奴も何もいないからな。」
前野は紫煙を目で追った。
「僕は奈島さんのお姉さんに賛成ですよ!みなさん煙草吸いすぎですよ。」
一番年下の滝はガムをモグつかせながら喝を入れた。
「すまない、すまない・・・。」
前野は苦笑しつつケータイ灰皿に煙草を押しつけて吉田の前に突き出した。吉田は会釈すると煙草を押しつける。前野は、それをポケットにしまうと、出口へと向かった。
「さてと、行くか・・・。」
「はいっ!次もまだありますしね。」
「滝はいつまでたっても若々しいなぁ・・・。」
「前野さんも若々しいですよ!」
お世辞に聞こえてしまう滝の声。前野はまた苦笑した。先月の24日で前野は三十路を迎えた。そのせいか、もう歳なことを実感してしまった。
「・・・そーか。前野お前も三十路の仲間入りしたんだったな!忘れてた。」
奈島はうれしそうに前野の背中をバシッバシッと叩いた。
「うるせぇなぁ。」
「そうなんですか。前野さんはもう三十路越えですか・・・。ボクは三十路前に結婚できるようにがんばりますね。」
「吉田てめぇ・・・。」
奈島は口元をゆがめて吉田を見た吉田はメガネを押し上げて奈島を見た。
(幸せだ・・・。仕事にありつけて、こいつらと入れて、幸せだ。結婚も何もできなかったが、幸せだ。これでいいんだよな。自分の幸せだからな・・・。)
 空を仰ぎ見ると、青く澄んでいた。


            『幸せよ。私もオレもあすかも幸せ。』



                         完