頭はいいけど、頭がバカなおこぼれちゃん

「・・・といった感じです。今もあすかちゃんは精神病棟です。」
滝は最後に安堵の息をもらした。前野はまた滝たちに背を向けて柵に寄り掛かりながら手探りで煙草をだした。
「幸せみたいでいいじゃないか。」
前野は他人事のように言うと煙草をふかした。
「まるで他人事ですね。」
吉田はメガネをあげると前野のとなりにきて、自分のポケットから煙草を取り出す。吉田は前野以上にヘビースモーカーだ。
「引きずるわけにも、いかない。それにあの子は幸せだと言ったんだ。人と形が違くても、幸せは幸せだろ。俺には俺の幸せ。お前にはお前の幸せ。だろ?だったらいいじゃねぇか。病院にいることになってもあの子は一人じゃないんだ。幸せだ。それで終わりだそれでいいんだよ。」
顔に似合わず、奈島はガムを口にして、一枚滝に渡す。滝は会釈をするとそれを口に含んだ。
「幸せですか・・・。ボクにはまだ難しいみたいです。それよか、奈島さん禁煙中ですか。」
吉田はわざとらしく紫煙を奈島に向けた。奈島は、静かにもう一枚口にガムを入れた。
「まぁな。姉貴に怒られたんだよ。」