頭はいいけど、頭がバカなおこぼれちゃん

「私幸せです。どうしてみんなは私の幸せを叱るの？母さんと父さんがいなくなった。私幸せです。なのにどうして？どうして？みんなは私の幸せを怒るの？」
瞳は一点を見つめ動かなくなった。頬を伝う涙。一瞬で明香に変わったと思えば、また押し黙る。
「オレの世界に幸せがきたんだ。喜んでくれよ。不安なんだよ。オレがおかしいことぐらいわかってるんだ。オレのすべてがズレてるのぐらい気づいてるんだ。でも、だからこその幸せがオレにはあるんだ。オレ今幸せだぜ？奈島、オレ幸せなんだよ・・・。」
奈島は目線を向ける痛々しい少年から、目線をそらした。下唇をかみしめたその顔は眉間にしわがよっていた。
「・・・っ。オレはおかしい。おかしいから！お前らはオレを避ける！オレは！オレはお前らを信じた！なのに！オレはおかしいよ！でも、一人の人間なんだ！誰かに愛されたいんだよ！オレの世界の二人以外に愛してくれる奴がほしいんだよ！オレは、オレはっ！」
泣き叫ぶような訴え。頬を伝う涙は止まることを知らず。あすかだけではなかったのだ朱鳥は知っていた自分の中の明香とあすかの存在を。
「前野さん。これで、おわり。あすかと明香ちゃん、と朱鳥くん、の、おもい。これで、おわり。」
静かに笑う儚げな少女。その頬の涙は今だに止まっていなかった。