奈緒の気持ちを無視するかのように、あっという間に卒業式当日になった。



 奈緒が自分の気持ちに気づいてからは、タイミングが良いのか悪いのか、式の練習ばかりで話す機会がなかった。

それでも奈緒は隼人の行動一つ一つがかっこよく見えて、いちいちドキドキしてしまった。

これが恋なのか。

楽しいことが大好き。

それだけだった奈緒は、初めて知った気持ちに戸惑ってばかりだった。

けれど同時に、悲しくなった。

せっかく知ったというのに、その相手とはもう一緒にいられなくなる。



「いよいよ私たちも卒業なんだねー…なんか寂しくなってきた…」
「何言ってんの、中学でも会えるのに」
「そうだけどー」



 そんな女子たちの会話の横で奈緒は一人、ぼーっとしていた。

(卒業したら…隼人は隣の市に行ってしまう…6年間一緒だったのに…隼人だけが…)