奈緒は俊への感謝の気持ちでいっぱいになり、また泣いてしまった。
最近めっきり泣き癖がついてしまったようだ。
「まったく…お前ホント泣き虫だなー。なんでそんなに涙腺緩いんだ?」
「そ、そんなのわかんない、わよっ!」
鼻をすすりながら、ハンカチで涙を拭った。
そんな奈緒を俊は優しい目で見ていた。
「でもお前、これからは隼人以外の男の前で泣くなよ?」
「え…?」
「お前意外と可愛いから、ホレる物好きもいるからな!」
「意外とって、物好きって何よー!」
「とにかく、これからはまたお前とオレは親友に戻る!いいな!」
「なんでそう偉そう…」
「オレ様俊様だからな!」
「ぶっ!何それ!」
久しぶりに俊と自然に笑いあえた。
やっぱり俊とは、こういう感じがいい。
一緒に笑いあえる、親友。
「さて、泣きやんだなら教室行けよな!授業始まるぞ!」
「え、でも、俊は?」
「オレは眠いからサボる!ほら、鐘鳴るから早く行け!」
「う、うん!」
奈緒は素直に教室へと走って行った。
その後ろ姿を見送りながら、俊は一息ついた。
笑えてよかった。
本当は眠くなどない。
ただ、すぐには“親友”に戻れそうにないから。


