思い出の、あの場所で。






 家に着いた奈緒は、ただいまも言わずにすぐに自分の部屋に入った。


「…バカ隼人…そんな大事なこと黙ってるなんてヒキョーだ…」


 (…でも、あたしらしくない)

いつも元気で明るく、正直でまっすぐ。

自分はそんな性格だったはず。

こんなに複雑な気持ちになったのは初めてだった。

そんな自分が嫌で、隼人の話を頭から消そうと思ったが、なかなか消えてくれない。


「なんなんだよーっ!隼人消えろーっ!」

布団に寝転んで、枕に向かって叫んでみる。


自分の思考に腹が立ってきた。

いつまで経っても消えないもやもや。



 「…なんなんだよ…好きじゃない…隼人なんか…」



言葉に出して否定して、初めて気づいた気持ち。


ホントは隼人のことがずっと好きだったんだと。


 気づいてしまった。


「…気づきたくなかった…」



急に寂しさがこみあげてきて、奈緒の頬に涙が一筋流れた。