「…だから、俊の気持ちには応えられないんだ…」

「………」

「ごめんね…」


 隼人はアメリカへ旅立った。

見送りには行かなかった。

きっとまた涙でぐしゃぐしゃな顔を見せることになるから、公園で最後に笑顔を見せ、お別れした。


 そして学校で俊を裏庭に呼び出し、自分の正直な気持ちを包み隠さず話した。


 「…やっぱりな」

「え?」

奈緒は申し訳なくて俯いていたが、俊の笑いを含んだ声を聞いて、思わず顔を上げる。


「オレ、こうなることわかってたからさ。奈緒がそう簡単に諦める女じゃないってわかってたから好きになったんだし」

「俊…」

「隼人の奴も…悔しいから黙ってたけど、あのバスケ試合の日、お前と隼人が話した後、あいつずっとお前を見てたんだよ」

「え…っ」

「あれは見ててアホらしかったなー。…ま、それ見ても奈緒を好きになっちまったオレが1番アホだけどな…」

「そんな…」

ははっと笑う俊に奈緒の胸は締め付けられる。

いつでも奈緒のことを見守ってくれてたのは俊だから。


「俊…ありがとうね…ホントに、ありがとう…」


もしも隼人より先に俊と出会っていたら、きっと俊に恋をしただろう。

そう思えるほど、俊は素敵な人だ。