3分ほど経った時、隼人が口を開いた。

「…さっきまどかが、別れるきっかけはもう1つあるって言ったの、覚えてるか?」

「あ…うん、なんなの…?」

さっきまで真っ赤な顔だった隼人が、急に真面目な顔つきで奈緒に向き直る。


 「実はオレ…アメリカに留学することになったんだ」

「…え…?」

「学校の伝統的な決まりで、1年の夏になる前に優秀な生徒が1人選ばれて、4年間ホームステイに行く権利が与えられる」

「ホームステイ…」

「中1の夏から高3になる前まで、本場で英語を勉強出来る」


「ちょ、ちょっと待ってよ!そんな、4年間もアメリカなんて…っ」

冷静に説明する隼人に対して、混乱する奈緒。

「長すぎるよ距離も時間も!!どうにかならないの!?」

「オレだって戸惑ってるよ!!」

「……っ」

「まさか、お前がオレを好きになってくれるとは思わなかったから…っ伝えないでアメリカ行けば、いつかは忘れられると思ってた…!」

「隼人…せっかく両想いになったのに…」

気づけば奈緒は涙を流していた。

隼人のことになると、すっかり涙もろくなってしまった。


 「…たった1度のチャンスなんだ。選ばれるからには学校からの奨学金で行けるし…オレはこれを目指してあの学校を受験した…」

「……」

「奈緒と一緒にいたい…伝えられずにいたけど、ずっと好きだったんだ…こんなことになるなら、もっと早く伝えてればよかった…っ」


 悲痛に言う隼人の横顔を見て、奈緒はハッとする。

隼人が泣いている。

卒業式ですら一滴も涙を流さなかった隼人が、奈緒のために泣いてくれている。


「……っ」